FD35mm F2 S.S.C.(1) 普通を通り越してかなり個性的なレンズ
キヤノンの(旧)FD35mm F2 S.S.C.をFDマウントアダプターを使ってNEX-5で遊んでみた、という話になるはずが、全然別の話をしています。
このレンズは同じスペックのニコン「Ai-s 35mm f/2」(過去記事「Ai Nikkor 35mm F2S(1) 無骨なまでのシャープネス」参照)と比べると開放では少し甘く滲んだ感じですが、ボケは滑らか。そして発色の傾向が全然違うのが面白いです。「あー今日はなんか気分を変えてみようかな」と思ったときに、かなりの確率でこのレンズを付けて外出する、お気に入りの一本です。
キヤノンの古いレンズはキヤノンカメラミュージアムに情報がまとまっていますが、“FD35mm F2”というレンズは5種類も存在します。どれだけ試行錯誤してんのよ、という感じもしなくもありません。というわけで、キヤノンカメラミュージアムの情報を引用して表にまとめてみます。
FD35mm F2 (I) | 1971年(昭和46年)3月発売 / レンズ構成8群9枚 / 最小絞り : 16 / 最大径x長さ : 64 x 60mm |
FD35mm F2 (II) | 発売年月不明 / レンズ構成8群9枚 / 最小絞り : 16 / 最大径x長さ : 67 x 60mm |
FD35mm F2 (III) | 1973年(昭和48年)1月発売 / レンズ構成8群9枚 / 最小絞り : 16 / 最大径x長さ : 67 x 60mm |
FD35mm F2 S.S.C. (I) | 1973年(昭和48年)3月発売 / レンズ構成8群9枚 / 最小絞り : 16 / 最大径x長さ : 64 x 60mm |
FD35mm F2 S.S.C. (II) | 1976年(昭和51年)4月発売 / レンズ構成8群9枚 / 最小絞り : 22 / 最大径x長さ : 65.3 x 60mm |
’73年の1月にFD35mm F2(III)を発売しておいて3月にはもう新しいレンズを投入するというあたりに、情け容赦のないキヤノンの真髄がにじみ出ています。自分が所有しているのは一番下のスーパースペクトラコーティングのセカンドです。なんだか宇宙怪獣を葬りそうな勢いの名前ですが、この最終型だけ最小絞り値がF22なので見分けるのは簡単です。S.S.C.の採用のほか、FD35mm F2 S.S.C.は、キヤノンが初めて一眼レフ用レンズにフローティング機構を採用した広角レンズということで、フローティング機構について、↓がカメラミュージアムからの抜粋。
フローティング機構とは、焦点調節に伴う収差変動を抑えるため、フォーカス群とは別に光学系の一部を独立移動させる機構である。本レンズの様に、前群を凹レンズ系、後群を凸レンズ系で構成する逆望遠型の広角レンズでは、レンズが近距離に繰り出されるに従い非点収差が増加する傾向にあるため、前述のフロー ティング機構により補正を行っている。なおフローティングというのは、レンズ構成の部分が浮き子のように移動する事から命名された
「前群を凹レンズ系」とありますが、FD35mm F2 S.S.C.は後期モデルから前玉が凸レンズに変更されています。S.S.C.(I)とS.S.C.(II)が登場するまでの3年の間に、キヤノンの中で「やっぱ凸にしーよぅっと」と思わせる何かがあったのでしょうね。ちなみに1975年11月にはCONTAXが17本のレンズを引っ提げてドゴーンと登場していますが、まあこのレンズにはあまり関係なさそうです。
しかし、CONTAXは登場時にレンズが17本もあったんですねえ。いや別にソニーのNEXシリーズ登場時はレンズがたったの2本だけだったことをどうこう言いたいわけではありません。1年経ってもまだ純正レンズが3本しかないとか、やっと発表があったと思ったら30mm F3.5という何とも微妙なスペックのマクロレンズだったとか、しかも発売は数カ月後だとか、そういったことを挙げ連ねてもそれは仕方のないことです。ソニーだってもうそろそろ空気を読みはじめるはずです。
(2011.07.08)
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