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オリンパスPEN「E-PL3」について暑くるしく語るレビュー

Epl3

ミラーレス一眼カメラが大豊作の今年の秋。6月から松下、ソニー、ペンタックス、オリンパスの発表や発売が立て続いてメディアの露出も格段に増えたことで、これまでミラーレス機をそんなに気に留めていなかった人にとってもなんだか気になる存在になってきていることでしょう。きっと。その一方で、「どれを買えばいいのか」という人も多少なりともいるかと。

そんな悩みに対しての答えは「自分が気にいったカメラを買う」ということに尽きるわけですが、自分はというとオリンパスのマイクロフォーサーズ機「E-PL3」を購入しました。マイクロフォーサーズのカメラは店頭ではよくいじり倒しているものの実際に購入したのは「E-PL1」に続き2台目。というわけで「E-PL3」のデキばえを初代PEN LiteやNEXと比較していきます。

まず自分がマイクロフォーサーズ機を選んだのは、すでに「NEX-5」を持っているからです。ここは大事なところ。そして「NEX-7」を購入することもほぼ確定しているので、ええと、つまりミラーレス馬鹿。また、マイクロフォーサーズに装着するマウントアダプターをすでにいくつか所有しているため、手持ちのレンズをすぐ使える、というのも理由のひとつです。というわけで自分の場合、「NEX」がメインカメラとしてあって、サブカメラをどれにするか検討した結果「E-PL3」になったと言えます。

「E-PL3」はかなり「NEX」を意識して作られており、非常によく似た位置づけのカメラに仕上がっています。加えてAFの快適さはミラーレス機で最高級。キットのズームレンズやマイクロフォーサーズのレンズを主に使用するなら、最初に選ぶミラーレスカメラとして文句なし。鉄板です。ただ、もしこれからマウントアダプターを使ってちょっと楽しんでみたい、と考えているなら、↓に理由を書いていますが、迷わず「NEX」、もしくは「GXR」です。これはもうしょうがない。



<E-PL3の素晴らしい部分>

Epl3_0

▼ チルト液晶を搭載している

「NEX-5」を使ったあとに他のカメラを使ったときにつくづく思うのは、液晶の角度を変えられないミラーレスカメラは不便で仕方がない、ということです。EVF(液晶ビューファインダー)が付いているカメラならファインダーをのぞきこむ撮り方で慣れているので問題ないわけですが、EVFがない場合、背面の液晶はやっぱり可動式であってほしいと思うわけです。

ローアングル/ハイアングル撮影に便利なのはもちろん、子どもの目線と同じウエストレベルでカメラを構えて上から液晶を見る撮り方ができたり、画像再生時にレンズを下に向けて見る必要がなかったりと、カメラを使うあらゆる状況でこのチルト液晶の威力は発揮されます。もーはっきり言ってチルト液晶がないカメラはどうにもツライ! となると、今発売されているミラーレスカメラでも選択肢はそう多くありません。「NEX」以外だとパナソニック「G3」か「E-PL3」か、という所まで絞られてきます。ちなみに「NEX」シリーズと「E-PL3」の上下可動式の液晶は、使い勝手はほとんど同じ(「E-PL3」の液晶の方がわずかに厚みがあるが大したことではない)というところもナイスです。

▼ AFが爆速である

使ってみて、ようやくミラーレスも一眼レフカメラに追いついてきたかーと感慨深くなりました。ミラーレス=AFが遅いという概念を打ち破るのに十分なほど、非常に快適なAFスピードです(ただ、各所で言われているようにMSC機構が載っていないレンズ、たとえば17mm F2.8パンケーキなどでは後ろ→前とピント位置を探す動作が入るため、爆速AFの恩恵は受けられない)。ここ最近の自分はAFとズームをまったく使用していないため、AFスピードは特に惹かれる要素ではなかったんですが、店頭で触った際に好印象だったのと、あとは家族から「最近お前が使っているカメラは使いづらい(←マウントアダプターでオールドレンズを付けっぱなしのため)からなんとかしろ」という圧力がかかり、手軽に撮れるカメラが必要だった、というのが購入理由のうち大きなウエートを占めています。

▼ 上位機でありPENのフラッグシップでもある「E-P3」より軽量・小型である

PENシリーズの最新モデルには上位機「E-P3」もありますが、「E-PL3」と「E-P3」との差はアートフィルターの数と有機EL液晶かそうでないか程度で、同じセンサー、同じ画像処理エンジンを積んでいる両者の画質性能面での差はほぼないでしょう。いっぽう、大きさはストロボが外付け式になっている「E-PL3」のほうが小型です。「E-P3」にないチルト液晶を積んでいるのにまだ小さい! よく頑張ったぞオリンパス!

E-P3 : 122.0mm(W)×69.1mm(H)×34.3mm(D)
E-PL3 : 109.5mm(W)×63.7mm(H)×37.3mm(D)

▼ カッコイイ

あとでデザインの影響によるデメリットも挙げますが、とりあえず「E-PL3」のスッキリしたデザイン&メタルメタルした金属的な質感はかなり好みです。

▼ ボディ内手ぶれ補正が付いている

これはパナソニック製品に対する明確なアドバンテージです。

Epl3_2

▼ アートフィルターが使える

最近では、ピクチャーエフェクト機能が付いていないカメラを探す方が難しくなってきましたが、その立役者ともいえるオリンパスの“アートフィルター”は健在です。個人的には、ピクチャーエフェクトは数枚撮ったらお腹いっぱいな機能ですが、それでも“ドラマチックトーン”を始めとしたフィルターが使える、しかも軽快に、という点は第3世代PENシリーズの素晴らしい部分のひとつです。ダイヤルを回せば“アートフィルター”モードになる、という基本的な部分も、アートフィルターの使用頻度のアップに一役買っています。


<E-PL3の「ここはどうかな?」という部分>

Epl3_3

▼ カスタム設定の項目を探すのにひと苦労

工場出荷状態では細かなカスタマイズができる設定項目が隠れています。普通にメニューの中を探しても見つかりません。きっと「このカメラが対象とするユーザーの目にすぐ触れる場所にあると混乱してしまうから」というオリンパスの配慮なんだと思います。おかげで久しぶりにカメラの説明書を読むことになりました。


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▼ 本体前面にグリップする部分がない

すっきりとした本体前面のデザインは、購入後に見ても惚れ惚れとする良い出来栄えですが、中指、薬指、小指で握るグリップがまったくありません。代わりに本体背面の親指を置く部分にグリップがあり、ホールド性は見た目ほど悪くない。ただ、「NEX」のしっかりとしたグリップを握ったあとに「E-PL3」を持つと違和感を覚えます。また、カメラバッグに入れたときなど、グリップに指をひっかけてひょいと持ち上げることが多いのですが、「E-PL3」ではそれができません。まあとはいえ、そこまで重大な問題点ではありません。


▼ オート露出がちょい明るめ?

センサーサイズが小さいからといえばそれまでですが、ISO1250以上の高感度はあまり使う気が起こりません。もちろん非常用としては使いますけどね。まあE-PL1の頃と比べて少しずつ良くなっていますし、そもそも高感度時のノイズ&画像処理によって出てくる画質については人によって許容量が違うのでそこは突っ込むところではありません。それにAUTO感度の設定で自分で下限と上限が決められるので、満足できるレベルの感度を上限に設定できます。ただ、やけに高感度で撮ろうとするなあ、と感じるのは「E-PL3」の自動露出が少しプラス気味なのでは、と感じることと関連しています。なので自分は露出補正を-0.3~-1.0にすることが多いです。まあこれも、たいして重大な問題ではありません。

▼ マウントアダプター+オールドレンズを使う際にイライラする

たとえば画像再生時に一部分を拡大したいとき、オリンパスの製品では「虫眼鏡」マークのボタンを押すと拡大する枠が表示され、もう一回「虫眼鏡」マークのボタンを押して初めて拡大表示されます。オリンパスとしてはこれが便利だと思っているのでしょうし、考え方の問題なので仕方がないんですが、この2回ボタンを押す操作が正直な話うっとおしい。

画像再生時ならまだ良いんです。マウントアダプターを使ってMFレンズで撮ろうとしているとき、ピント位置を確認するために毎回2度ボタンを押すのは結構なわずらわしさになります(以前のモデルに比べてボタンの連打が効くようになったのは改善点)。さらに、ソニーや松下のカメラならキャンセルボタン以外にも、シャッターボタンを押せば拡大表示から通常表示に復帰しますが、オリンパスのPENシリーズでは、「虫眼鏡」マークのボタンの長押しをしないと通常表示に復帰できません。長押しって。おかげで、「虫眼鏡」マークのボタンを何度も押したり、十字ボタンで拡大枠を操作したり、拡大表示をやめようと操作している間も、人差し指はずっと遊んだままです。そもそも親指だけで操作するわりには、「虫眼鏡」マークボタンと十字ボタンが離れすぎているような気がします。↓のように。

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マニュアルフォーカスレンズで撮影時に一部を拡大したいときは、1)「虫眼鏡」マークボタンを押して上の写真の状態にします。十字ボタンで枠の移動もできます。2)本当に拡大したいときはもう一度「虫眼鏡」マークボタンを押すとやっと拡大表示されます。3)拡大表示から抜けるとき(=全体の構図を確認したい)ときは「虫眼鏡」マークボタンを長押しします。細かなピント位置の調整を行なうたびに、上の手順を毎回踏む羽目になります。

「E-PL3」は、メニュー画面を開いていても、露出補正をしていても、感度を変更していても、アートフィルターを選んでいても、シャッターボタンを押せばすぐに撮影に復帰できます。拡大表示操作時だけ、シャッターボタンを押してもキャンセルにならないのです。恐らく「マクロ撮影等で拡大したまま撮りたい」という状況に向けた仕様なのだと思います。それならせめて「拡大表示時にシャッターを押しても拡大表示をキャンセルしない」かどうかを選ばせてくれと言いたい。

また、MF操作時にピント位置を明示する「NEX」のピーキングMF機能のようなものが付いていないのもマウントアダプター使用時にはツライところ。逆に「NEX」や「GXR」のピーキング機能が地味ながらいかに効果的か、という事がよくわかりました。

「E-PL3」はボディ内手ぶれ補正が付いているおかげで、どんなオールドレンズでも手ぶれ補正が効くという素晴らしいポテンシャルがあるので、そういった細かな部分が余計に残念です。

<まとめ>

マウントアダプター+オールドレンズを使って撮影する際には少し不満があるものの、ある程度は慣れで解決できる部分でもあります。カメラなんて、使っていくうちに慣れていくもんですしね(それを言っちゃうともはやレビューの意味がない)。そもそもマウントアダプターを使うなんてのは付加的な娯楽なので、別に誰かに落ち度があるわけじゃありません。

ただ、マウントアダプターでオールドレンズを愉しむ、という点を数値化するなら「NEX」シリーズを100だとするとオリンパスのPENの現状は75~80くらいだと思います。センサーサイズの違いによってレンズの焦点距離が1.5倍(NEX、GXR)になるか2倍(マイクロフォーサーズ)になるか、というのは構造的な問題なので仕方がないとしても、ちょっとだけ現状に手を加えるだけで使い勝手がグーンと向上すると思いますし、それが結果的に製品本来の価値を高めることにもなるはずです。だからオリンパスには今後の改善を猛烈にお願いしたい。

マウントアダプターうんぬんを抜いて見た場合、個人的な評価はすこぶる高い製品です。特にAF。そしてAFに付随して顔認識と眼認識。このカメラであれば、奥さんにカメラを渡して子どもを撮ってもらうときにも絶大な安心感がありますし、自分でAFで撮るときもビジネスクラスのように快適です(ファーストクラスと書きたいところだがファーストクラスには乗ったことがない)。ファミリーカメラ兼自分のサブカメラとして大いに活躍することでしょう。


OLYMPUS マイクロ一眼 PEN Lite E-PL3 ボディ ブラック

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OLYMPUS マイクロ一眼 PEN Lite E-PL3 ダブルズームキット ブラック


(2011.09.09)

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