DSC-RX1への愛があふれたレビュー
基本的にミラーレスカメラを取り上げることが多いこのブログですが、GigazineのDSC-RX1レビューを読んで、こんなにカメラに対して熱のこもっていないレビューを読むくらいなら自分で偏向性あふれるレビューを書いてやる、というわけで今回はサイバーショット DSC-RX1です。
私がRX1を購入するにいたった経緯としては、ここ最近、35mm(もしくは35mm相当)の明るいレンズを探しており、OM-Dと使いたいオリンパス17mm F1.8や、来年出てくるらしいXマウントのXF23mm F1.4、もしくは今年の夏前くらいに中古カメラ店に旅に出たEマウント 24mmゾナーをもう一度入手しようかなど考えてはニヤニヤしている日々でした。シグマの35mm F1.4がミラーレス用に出ていれば飛び付いていましたが、一眼レフからは距離を置いて久しいので残念ながら指をくわえて見るしかない状態。
現状手に入るもの、現実的な選択肢としてE 24mmかなーという方向性が固まったときに、待てよ、8万円超のレンズを買うのであればもしかして(いや「もしかして」も何もないわけですが)と、当初はまったく候補にも考えていなかったDSC-RX1が脳裏をよぎり、そして気がつくと、20万円超という価格や価格、そして価格といった大きなハードルをものともせずにRX1が我が家にやってきたわけです(代わりにいくつかのカメラ&レンズが我が家から去ることに)。
以下、愛情があふれすぎたレビューです。なんらかの理由によりRX1が大嫌い、もしくはRX1は親の仇であるからして許すわけにはいかない、といった方は読まれないほうが良いでしょう。
「あー、これこれ」 求めていたツァイス感
Eマウントの24mm F1.8はもちろん良いレンズですが、NEX-5Nで使用していた際に、「さすが」という画を炸裂するときがある一方でたまに他のレンズとの差がわかりづらい、他のレンズで撮ったものと並べたときに「あー、これはどこからどう見てもツァイスのレンズですね」というツァイス感があまり伝わってこないことがありました。それはその場の光線によるものが大きく、洗練された画づくりといえばそうかもしれず、そもそもこの世のすべてのツァイスレンズを触ったわけでもないので大きな事は言えませんが、そういう感覚としてのツァイス感という点で、このRX1のF2/35はまぎれもないカールツァイス。レンズ一体型なので画像処理エンジンとセットで考えないといけませんが、それでもこのレンズは素晴らしい
最初に撮った画を見たときに、焦点距離も明るさも違いますがプラナーの1.4/50で撮ったときのことを思い出しました。ツァイスのレンズってこんな感じだよな、という自分の記憶と合致する画をガンガン叩きだします。空の青さやコントラスト、人を撮ったときの輪郭がないのに浮き上がって見えるような立体感などなど、相当高い確率で「うおっ」という声が出ます。ひと言で言うなら感動的。早くも伝説の域に達した、そんな気すらします。褒めすぎですか。購入前は「ゾナーかあ」という気持ちがなくもなく、その印象はきっとRX1の事を気にとめた人の多くに通じるものだと思いますが、実際触ってこのツァイス感を喰らうとレンズの名前のことは気にならなくなりました。むしろRX1に載ってるゾナーは超スゴイ、という気にさせてくれます。
あと、RX1を触っていて思うのは「NEXのフルサイズ機で、この画を出せるのかな」という念。出てもいないフルサイズNEXのことなのでわかりませんが、レンズとセンサー、画像処理の3つで絶妙に補い合えるレンズ一体型であることの説得力がこの画にはあるなあと。ミラーレスカメラを愛する私としてはNEXでも頼むぜという思いですが、なんか出てくる前から負けているような、出てきたとしてもとんでもなくデカいレンズを付けないと太刀打ちできないような、そんなことを考えさせられるくらいハイクオリティーなカメラです。
「DSC-RX1」のイメージ=フルサイズセンサーと35mmのレンズ、あと黒い箱
という図式を購入前は抱いていました。いや、今もわりとそうです。カメラ本体は箱。ただ、その箱がえらく小さい、という部分がRX1のいくつかある飛び道具のひとつなわけで、常に身の周りに置いておきたい欲求が半端じゃなく高まります。たとえスマートフォンを家に置いて出かけたとしても、このカメラだけは持っていたい。極端に言えばそれくらいのレベル。
カメラ愛好家にしか伝わらない感覚かもしれませんが、カメラを持っていない状況でちょっとした被写体に出くわしたときに何か途方もない損失をしたような気分になる、という、
その撮りたさ度合い、常に持っていなければという強迫観念。そして、風景を見るときにRX1でこの今見ているものを撮るとどんな感じに写るだろう、といったような「今すぐここで撮ってみたい欲求」がRX1はかつてないほど弩級です。
↑の写真は下の等倍拡大です。解像力も半端ないです。私はRX1の画を見て、DP1 Merrillを手放す覚悟ができました。シャープネスだけで言えばわずかの差でDP1 Merrillに軍配が上がりますが、あちらはピーカン番長、太陽が落ちると期待できなくなる子なので、利用シーンの広さを考えればRX1があればいいや、となりました。
最新のフルサイズセンサーってなんか常軌を逸してスゴイ
バッグに入れていたときに右肩にある露出補正のダイヤルが勝手に回っていて意図せずド・アンダーで撮影したときに、ソニーのフルサイズセンサーの威力に納得しました。諧調が豊かというのはこういう事か。どこまでいっても諧調がある。そのときは人物を撮っていて、カメラで再生してみて「あら暗いわね」という状況だったんですが、アンダーの中に人の像が浮き上がって見えるわけです。
高感度時の性能についても呆れるほど強烈です。ISO25600とスペックに書かれているのを見ても「バカなこと言ってないでもう寝なさい」くらいの現実味のない数字でしたが、ほとんど真っ暗なところでひと昔前のコンパクトカメラのISO800くらいの画を叩き出してくるので、もはやひれ伏すしかありません。
ほぼ無音のシャッターが気持ちいい
ほぼショックのないレンズシャッターのかすかな音がするだけ。一眼レフが繰り出す切れの良いシャッター音も私は大好物ですが、なんともささやかなシャッター音でその場を写し取り、えげつないくらいの画を叩き出してくる、このアンバランスさがRX1は最高です。そういえば、工場出荷時の状態では「カシャッ」という音声が鳴るようになっていますが、そんなのは速攻OFFです。
素晴らしいカスタマイズ性
十字ダイヤルのうち3方向に好きな機能を割り振れます。NEXゆずりといえばNEXゆずりのカスタマイズ性。あと、シャッターの横にある“C”ボタンにも機能を振ることができます。自分の場合ですと、ISO感度、AF/MF。あと、JPEGとRAW+JPEGをすぐに切り替えられるように記録画質設定を登録しています。
JPEGとRAW+JPEGを切り替える必要なんてあるの?と思われそうですが、ソニーのカメラはJPEGだけでしか使用できない機能がかなり多く存在します。そのうちのひとつが超解像ズーム。画質が(あんまり)劣化しないように超解像処理をおこなって画面の一部分を拡大、つまりズーミングと同様の効果をもたらす機能です。まあ、使っているかと聞かれるとほとんど使っていない、ということになりますけど。ほかにもHDRやピクチャーエフェクト、スイングパノラマ(スイングパノラマはモードダイヤルで切り替えると自動でJPEG記録になる)など、RAW記録時には使用できない機能が盛りだくさん!ええ、これはソニーへの嫌味です。こんなのRAWファイルと同時記録するJPEGにも効果を適用してくれればいいじゃん。そうしたらRAW+JPEGのまま使えるのに。このソニーさんの方針は初代のNEX-5から何も変わっていません。RAW記録に対する乗り気のなさがうかがえます。
持っていて、なんだか高揚してくるボディ
20万円を越えるカメラですから、安っぽい造りだったりしたら即バッシングなのは作り手も意識しただろうなと思いますが、その辺りで不満を覚えることは一切ありません。一番良いのは絞りとフォーカスリングを回すときの絶妙な重さ。こちらの好みがバレているのか、個人情報が流出したかと危惧するほど、いい感じの重さです。たとえばXマウントのレンズの絞りリングはもう少しだけ固くてもいいかな、という印象を受けたりしますが、RX1はどんぴしゃ。このレンズの触感も、ああ良いレンズだああ良いレンズだと連呼したくなる要素のひとつになってきます。
一番気になり、そしてあまり期待していなかったAF。だがしかし
購入前に唯一気になっていたAF性能は、ちょっとの光さえあれば概ね文句ないレベルです。正直に言ってAFには期待していなかったので、むしろ意外 と速くてびっくり。精密に測ったわけではありませんが、体感レベルで言うとNEX-5Nと似たような感覚。あと、X-E1+18-55mmで 23mm(35mm相当)にあわせたときとほぼ同じか少し遅いかな、くらいの感覚です。間違いないのはEOS Mよりも速い、ということです。
ごくたまに、どこにも合焦していないのに「フーやれやれ」とばかりに測距を終えたりしますが、「わかったわかった、オレがもう一回半押ししような」と許容します。ただ、相当暗い環境になると、サーチ動作はするんだけど見つからなくて遅い、もしくは、いやそこ全然違うんだけど、という場所で合焦して「フーやれやれ」状態になります。なので、たとえば真っ暗な森の小路を撮る、なんていうときは多少、AFに苦労する状況は出てきます。そういう時は素直にMFの出番となり、NEXにもあるピーキング機能が大活躍。ピーキング機能は本当に便利ですね。MF操作がまったく苦になりません。ペンタックスも載せていますが他社ももっと導入すればいいのにと。
自分の主な被写体はすばやく不規則に動き回る子どもなので、子どもを撮る時にAF性能はどのくらい助けになるか、と言うと、暗い室内で動き回られると間に合わないことが多いレベル。ただ、一瞬でも相手が止まってくれれば大体問題ありません。あと、顔認識と個人顔登録という素敵な機能があり、子どもの顔を認識するとそこにフォーカスや露出をあわせてくれます。子ども持ちにはこれは本当に重宝する機能で、これがあるおかげで子ども撮影時の歩留まりがずいぶん上がってきます。
開放で上限1/2000秒のシャッタースピードってどう?
シャッターは開放は1/2000秒。ちょっと心もとない。ただピーカンの昼間だと、開放はもちろんF2.8でもオーバーになりますので、たとえシャッタースピードが開放で1/4000秒稼げたとしてもあんまり大差ないような気もします。それにレンズシャッターだから仕方ないよね、という気もしますし、そのおかげであの静粛なシャッター音が堪能できると思えば、1/2000秒でも全然気になりません。今からNDフィルター買いに走ってくる、くらいの勢いです。うん。我ながらすごい、このフォロー精神。愛のなせる技といえましょう。ちなみに発表後の仕様変更により、F5.6以上に絞れば1/4000秒で切れるようになっています。
マクロで撮れるツァイス
前面にあるリングを回すと20cmからのマクロ撮影が可能になります。これがいい。使ってみるまでは「そんなの使うことあるのかね」と斜に構えていましたが、このカメラは本当にどこにでも持ち歩きたくなる性質を持っているため、被写体のバリエーションも出かける前にこちらが想定した以上になります。「あ、これ寄って撮りたい」と思ったときに、撮れる。帰ってPC上で見て「なんじゃこれすげえ」と驚愕する。そんなことが意外とあります。それにツァイスの35mmレンズで20cmまで寄れたら、そりゃあ良いに決まってますよね。
RX1のダメなところを挙げてみる
もう周りが引くくらいRX1の良さに感激してしまっているので、ダメなところについても「むしろ可愛げがあっていい」くらいの感覚ですが、褒め倒すだけではアレなので「ここはどうかな~」という部分について。
本体が小さく、レンズが大きく、センサー/レンズに手ブレ補正はないため、コンパクトカメラと同様のノリで片手で軽く撮っていると手ブレ画像を量産します。まあこれも「いやオレが至らなかった。カメラはちゃんとホールドして撮るのが常識だよな」と納得し、カメラのせいにはしません。このあたりにもRX1への溺愛ぶりが伝わるかと思います。
もうひとつ挙げるなら、アクセサリーについて。
全般的にお値段がどうかしてるのがカチンときますが、まあすべてを買いそろえるわけではないので良しとしましょう。アクセサリーの中では、油断すると頻発する手ブレを少しでも減らすために欠かせないサムグリップ「TGA-1」。1万9800円也です。この部品にこの値付けってどうなんだろう。2割引でも1万6000円です。しかも取り付けてみると、意外と縦方向への遊びが多く、縦に揺らすとカタカタと音がします。もう一度書くと、2割引でも1万6000円です。
値段相応かは議論の余地がありますが、しかしサムグリップは効果絶大。親指がやっと終の棲家を見つけた、そんな感じです。しかし残念なのがこのサムグリップ「TGA-1」、外付けEVF「FDA-EV1MK」とは一緒に使用できないところ。サムグリップはシューに引っ掛けて(&固定して)使用するんですが、電気的な接点を持ち合わせてない、言ってみればただの固いモノなので、電子ビューファインダーをその上に乗っけて覗いても何も写らないという。どちらかしか使用できないアクセサリーを両方持つのはさすがに無理な話で、サムグリップを購入した後、もはやEVFに手は出せません。ちなみに外付けEVFは2割引で3万6000円です。どうなのその値段。
また、アクセサリーといえば、ココ最近のソニーのカメラの傾向としてバッテリーの充電器は同梱されず、本体をマイクロUSBで充電するケーブル&アダプターが同梱されます。これはRX1でも同様です。なのでバッテリーチャージャー「BC-TRX」
は別途買いました。
むしろ、なんでバッテリーの充電器を本体同梱にしてくれないのか。20万円超のこのカッコいいカメラをUSBケーブルにつないで充電しろなんて、それはあまりに風情がないのではないか。
というのが不満点でしょうか。カメラ自体に対する不満はほとんどない、という事でした。
まとめ
「ポケットに入るフルサイズ機」、という言い方もできますが、「凄まじい画を叩き出すカメラ、しかも超小さくて最高」というほうがしっくりきます。この画質であれば、一眼レフのサイズでも誰も不満に思わないはずで、大きなカメラをいつも持ち歩くガッツマン&ガッツウーマンにはこのカメラは必要ないでしょう。しかしスタローンだっていつもヘリを撃ち落とすためのバズーカを持ち歩くわけにはいきません。そして、バズーカ級の破壊力がポケットに入っている、と思うとなんかワクワクしませんか。もう私は購入してからというもの、ワクワクしっぱなしです。
今回、ほとんど作例を載せていませんが、載せちゃダメなものしか撮っていないのではないかとか、ここまで熱く語っておいてその写真の腕ってどうなのとか、そういったシビアな事情はともかくとして、このカメラはぜひ自分の撮りたいものを自分の撮りたい瞬間にシャッターを切って出てきた画を見て「うおっ」という感覚を多くの人に味わってもらい、その感覚に虜になってRX1ユーザーが激増し、そして3年後、いや3年だとちょっと早いから5年後くらいにDSC-RX2が登場してほしいわけです。
つまりこの冬買うならDSC-RX1しかない。間違いありません。
(2012.11.23)
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